17 あずさ 1212 「次は一人で来なさい」
- 2014/12/12
- 11:19
二人で下見に来たのは、繁華街から少し離れた角にあるビルの一画だった。
駅前の賑わいと飲食街の喧騒からはいずれも遠いくせに、そのビルだけが妙に煌々と灯りを放っている。
黄色に光る派手な看板の文字は──テレクラ、DVD鑑賞室、大人の憩いの場。
つまり、そういうビルというわけだ。
三階のDVD鑑賞ルームに入ると、棚を掃除していた若い男の店員が、あずさを見て目を剥いた。男と一緒でも、ここに女性客が来るなどあり得ないのだろう。
僕は構わず、店の奥へと、あずさを連れて進んだ。店内はDVDがびっしりと並び、それを陳列する書架が狭い通路をいくつも作っている。
パッケージを見ていた男たちが、僕たちに気づいて、ぎょっとしていた。
つまりは、そういう店なのだ。女の子に縁がない男たちが集う、淋しい性欲処理の場。
あずさは落ち着かないのか、きょろきょろと辺りを見回している。
他の男性客から見られていることは承知しているようで、男たちの視線を敢えて気にしないような素振りで、彼女の目は棚にずらりと並ぶDVDの刺激的なパッケージを見ていた。
自分と同じくらい、あるいはもっと若い女の子たちが、あられもない姿で男の欲望の餌食になっている写真を。
男の欲望がこれほどわかりやすい形になっている空間は、女の子にとって逆に新鮮なのかもしれない。目にすることのできる娘など、滅多にいないだろうが。
僕はさりげなく、あずさに訊いた。
「どれが観たい?」
「え?」
「店内に並んでいるDVDを、ちらちら見てたよね。あすさちゃんはどんな作品を観てみたいの?」
「えっと、私……」
あずさが困ったように、胸の前で手を組む。
今日もいかにも女子大生というファッションで、短いスカートからナマ脚を覗かせている。その膝が小さく震えているのに、僕は気付いていた。
周りじゅうの男たちが聞き耳を立てている。この空間の中では明らかに異端な僕たちの言動を、彼らの鋭敏な聴覚は聞き漏らすことはないだろう。
知的で上品な出で立ちの女子大生がいま、「どんなアダルトDVDを観てみたいんだ?」と訊かれているのだ。男どもの耳は象のそれと化しているはずだ。
怪しげな棚の間で立ち尽くすあずさが震えているのは、なにも意地悪な質問のせいだけではないことに、僕は気付いていた。
この娘は明らかに興奮している。
きちんと服を着て指一本も触れられてはいないが、それでも男たちに晒されて慰み者になっている自分に発情しているのだ。
この一見おとなしいお嬢様は、どろどろとしたマゾの血を内に秘めている。それがこんな明るい照明の下で、狂おしいばかりに女体の内側で荒れ狂っているのだ。
豊かに盛り上がったバストの胸が上下し、はあはぁと息遣いが荒い。
やがてあずさは、店の隅のほうに視線を向けた。
「あ、あのコーナーのが、ちょっと気になったかな、って……」
その一角には、露出作品が並んでいる。
やはりな、と僕は思った。この娘の性癖を考えると、まず真っ先に意識がいくのはそこだろう。
見られて感じることに悦ぶタイプのマゾ──そては飼い主である僕だけでなく、あずさ自身もはっきりと自覚しているはずだ。
上品な美人女子大生は通路に立ったまま、もじもじとしている。
自分の発言が周りの男性客たちに聞こえ、彼らを刺激したことを承知しているのだ。
あからさまにこちらを覗き込んでくる奴はいなくても、きっと棚の隙間からちらちらと覗かれていることは、彼女もよく知っている。
僕はあずさを、その露出モノのコーナーへ連れて行った。
可愛いペットは顔を火照らせながら、棚に並んだパッケージ写真を見つめている。
飼い主に連れられて夜の公園で全裸で立っている女性。通行人に背を向けてコートの前を開いている女性。走っている車の中で大きく脚を広げてオナニーをしている女性。
それらの写真を見つめるあずさは、はぁはぁと息を荒げ、瞳をうるうると潤ませていた。明らかに興奮している。
(私も……したい……)
その無言の叫びが聞こえてくるようだ。
実のところ、僕はためらっていた。
この店はDVDを鑑賞するための個室を備えている。もちろん男たちが映像を観ながら自慰をするためだ。
そこに二人でこもって、この娘が観たくてうずうずしている露出もの作品を、一緒に鑑賞しようか、と思ったのだ。
もちろん見るだけで終わるはずがない。映像の中で嬲られる女性たちに感情移入したあずさが、興奮して僕の責めを求めてくるのは明らかだ。
そうなったら狭い個室の中ではあるが、いつものようにたっぷりといたぶって、あの甘い嬌声をあげさせてやってもいい。
おそらく店じゅうの男どもが聞き耳を立ててこの娘の喘ぎ声に聞き入るだろう。
……それを実行したときのことを想像してみた。
個室であずさを責め立てながら、「聴かれてるよ」と耳元で囁いてやる。
彼女は「いやぁ」と抵抗するものの、火がついてしまった体の疼きを抑えられるはずもなく、恥ずかしい喘ぎ声を聴かれながらアクメへと導かれるのだ。
やってみてもいいだろう。
それはこの娘に対する羞恥責めの一環であり、立派な調教プレイでもあるのだから……。
だが、僕はその考えをそっと脇へどけた。今回の目的はそこにはない。本意はあくまで、この娘の単独プレイの下見だ。いまの反応を見るに、もうその目的は十分に果たした。
「あずさ」
僕は隣でひくひくと小さく震えているペットに告げた。
「だいたい雰囲気はわかったね? 次は一人でここに来なさい。そして以前話した通りのことをするんだ。……この人たちの前で」
上品なお嬢様女子大生は、棚の向こうで聞き入っている覗き屋たちを意識するように視線を泳がせると、僕に身を寄せて腕を掴み、顔を伏せたまま恥ずかしそうに呟いた。
「はい、仰せに従います、ご主人さま……」
小さなその声を、店じゅうの男たちが聞いていた。
(18へ続く)
駅前の賑わいと飲食街の喧騒からはいずれも遠いくせに、そのビルだけが妙に煌々と灯りを放っている。
黄色に光る派手な看板の文字は──テレクラ、DVD鑑賞室、大人の憩いの場。
つまり、そういうビルというわけだ。
三階のDVD鑑賞ルームに入ると、棚を掃除していた若い男の店員が、あずさを見て目を剥いた。男と一緒でも、ここに女性客が来るなどあり得ないのだろう。
僕は構わず、店の奥へと、あずさを連れて進んだ。店内はDVDがびっしりと並び、それを陳列する書架が狭い通路をいくつも作っている。
パッケージを見ていた男たちが、僕たちに気づいて、ぎょっとしていた。
つまりは、そういう店なのだ。女の子に縁がない男たちが集う、淋しい性欲処理の場。
あずさは落ち着かないのか、きょろきょろと辺りを見回している。
他の男性客から見られていることは承知しているようで、男たちの視線を敢えて気にしないような素振りで、彼女の目は棚にずらりと並ぶDVDの刺激的なパッケージを見ていた。
自分と同じくらい、あるいはもっと若い女の子たちが、あられもない姿で男の欲望の餌食になっている写真を。
男の欲望がこれほどわかりやすい形になっている空間は、女の子にとって逆に新鮮なのかもしれない。目にすることのできる娘など、滅多にいないだろうが。
僕はさりげなく、あずさに訊いた。
「どれが観たい?」
「え?」
「店内に並んでいるDVDを、ちらちら見てたよね。あすさちゃんはどんな作品を観てみたいの?」
「えっと、私……」
あずさが困ったように、胸の前で手を組む。
今日もいかにも女子大生というファッションで、短いスカートからナマ脚を覗かせている。その膝が小さく震えているのに、僕は気付いていた。
周りじゅうの男たちが聞き耳を立てている。この空間の中では明らかに異端な僕たちの言動を、彼らの鋭敏な聴覚は聞き漏らすことはないだろう。
知的で上品な出で立ちの女子大生がいま、「どんなアダルトDVDを観てみたいんだ?」と訊かれているのだ。男どもの耳は象のそれと化しているはずだ。
怪しげな棚の間で立ち尽くすあずさが震えているのは、なにも意地悪な質問のせいだけではないことに、僕は気付いていた。
この娘は明らかに興奮している。
きちんと服を着て指一本も触れられてはいないが、それでも男たちに晒されて慰み者になっている自分に発情しているのだ。
この一見おとなしいお嬢様は、どろどろとしたマゾの血を内に秘めている。それがこんな明るい照明の下で、狂おしいばかりに女体の内側で荒れ狂っているのだ。
豊かに盛り上がったバストの胸が上下し、はあはぁと息遣いが荒い。
やがてあずさは、店の隅のほうに視線を向けた。
「あ、あのコーナーのが、ちょっと気になったかな、って……」
その一角には、露出作品が並んでいる。
やはりな、と僕は思った。この娘の性癖を考えると、まず真っ先に意識がいくのはそこだろう。
見られて感じることに悦ぶタイプのマゾ──そては飼い主である僕だけでなく、あずさ自身もはっきりと自覚しているはずだ。
上品な美人女子大生は通路に立ったまま、もじもじとしている。
自分の発言が周りの男性客たちに聞こえ、彼らを刺激したことを承知しているのだ。
あからさまにこちらを覗き込んでくる奴はいなくても、きっと棚の隙間からちらちらと覗かれていることは、彼女もよく知っている。
僕はあずさを、その露出モノのコーナーへ連れて行った。
可愛いペットは顔を火照らせながら、棚に並んだパッケージ写真を見つめている。
飼い主に連れられて夜の公園で全裸で立っている女性。通行人に背を向けてコートの前を開いている女性。走っている車の中で大きく脚を広げてオナニーをしている女性。
それらの写真を見つめるあずさは、はぁはぁと息を荒げ、瞳をうるうると潤ませていた。明らかに興奮している。
(私も……したい……)
その無言の叫びが聞こえてくるようだ。
実のところ、僕はためらっていた。
この店はDVDを鑑賞するための個室を備えている。もちろん男たちが映像を観ながら自慰をするためだ。
そこに二人でこもって、この娘が観たくてうずうずしている露出もの作品を、一緒に鑑賞しようか、と思ったのだ。
もちろん見るだけで終わるはずがない。映像の中で嬲られる女性たちに感情移入したあずさが、興奮して僕の責めを求めてくるのは明らかだ。
そうなったら狭い個室の中ではあるが、いつものようにたっぷりといたぶって、あの甘い嬌声をあげさせてやってもいい。
おそらく店じゅうの男どもが聞き耳を立ててこの娘の喘ぎ声に聞き入るだろう。
……それを実行したときのことを想像してみた。
個室であずさを責め立てながら、「聴かれてるよ」と耳元で囁いてやる。
彼女は「いやぁ」と抵抗するものの、火がついてしまった体の疼きを抑えられるはずもなく、恥ずかしい喘ぎ声を聴かれながらアクメへと導かれるのだ。
やってみてもいいだろう。
それはこの娘に対する羞恥責めの一環であり、立派な調教プレイでもあるのだから……。
だが、僕はその考えをそっと脇へどけた。今回の目的はそこにはない。本意はあくまで、この娘の単独プレイの下見だ。いまの反応を見るに、もうその目的は十分に果たした。
「あずさ」
僕は隣でひくひくと小さく震えているペットに告げた。
「だいたい雰囲気はわかったね? 次は一人でここに来なさい。そして以前話した通りのことをするんだ。……この人たちの前で」
上品なお嬢様女子大生は、棚の向こうで聞き入っている覗き屋たちを意識するように視線を泳がせると、僕に身を寄せて腕を掴み、顔を伏せたまま恥ずかしそうに呟いた。
「はい、仰せに従います、ご主人さま……」
小さなその声を、店じゅうの男たちが聞いていた。
(18へ続く)